【糸島】福島良治さんと歩くまち歩き体験記|海だけじゃない「自己実現のまち」筑前前原を巡る3日間

森とふれあうワークショップ 森への道
この記事でわかること
  • 福島良治さんが横浜から糸島へ移住し、多彩な活動を展開するまでの経緯
  • 糸島の「出る杭を打たない」寛容な文化と、地元民×移住者が生む共助の精神
  • 福島さんが愛する糸島の風景──海ではなく「田んぼ」と「麦畑」の美しさ
  • 筑前前原駅周辺の中心市街地を歩く、糸島 まち歩き モデルコース
  • 森と海の循環を体感するワークショップ、海を見ながらの朝ごはんなど糸島の「体温」に触れる体験

 博多駅から福岡市営地下鉄直通のJR筑肥線に揺られること約45分。終点・筑前前原駅で降りると、そこが糸島の中心市街地。かつての宿場町は、いま、全国から移り住んだ人々が「好きなこと」を持ち寄って、静かに、しかし確実に新しい景色を描き始めています。

 今回GOOTが出会ったのは、福島良治さん。横浜から糸島へ移住して10年半。「好き」を起点にした活動を次々と形にしてきた人物です。

 糸島 まち歩き ──筑前前原駅周辺の中心市街地、森と海の循環を体感するワークショップ、そして糸島の冬の味覚──。ガイドブックには載らない糸島の「奥」へ、福島さんと一緒に3日間歩いてきました。

目次

横浜から糸島へ ── 福島良治さんが選んだ道

福島 良治(ふくしま・りょうじ)さん(いとしまコンシェル合同会社 代表社員)取材時の様子
福島良治さん(いとしまコンシェル合同会社 代表社員)
今回のキーパーソン

福島 良治(ふくしま・りょうじ)さん

いとしまコンシェル合同会社 代表社員/いとしまちカンパニー合同会社 代表社員

プロフィール|「一番住みたいところ」は糸島

1978年、神奈川県横浜市生まれ。三児の父。子どもを育てる環境を求めて2015年3月に糸島へ移住しました。

移住先を選んだ基準は、ただひとつ。

「全国の中で一番住みたいところに行きたいなと思って、糸島に移住をしてきました」

日本全国を見渡して、自分と家族がもっとも惹かれた場所。それが糸島だったのです。現在は、コミュニティスペースやシェアオフィスの運営、国産落花生100%の無添加ピーナッツバター専門店「いとナッツ」の経営、宿の運営、さらには糸島の中心市街地活性化に向けた取り組みなど、多岐にわたる活動を展開しています。

「今は好きなことをいろいろやってます」

その言葉は、軽やかでありながら、10年という歳月の重みを含んでいます。

糸島との関わり|映画館のないまちに、映画を

当初は、自然の豊かさ、そこから紡ぎ出される食の豊かさ、そして福岡都市圏への近さを享受する「生活者」でした。しかし、人とつながるうちに、福島さんの中で何かが変わり始めます。

「糸島の人がすごくいいっていうことが、移住してきてから非常に思っていて。どんどんいろんな人々とつながるうちに、地域のことや、糸島でいろんな活動がしたくなってきた」

きっかけのひとつが、仲間との飲みの席でした。筑前前原駅前で、移住者同士が将来の夢を語り合っていたら、口々に「映画館のオーナーになりたい」「映画をつくってみたい」など映画に関する声があがった。映画館がなくなってしまった糸島に、映画館を作ろう──「いとシネマ」は、そんな酔った勢いと本気が混じり合うところから生まれました。「星降る伊都の映画館」を掲げた第1回の野外上映は、2,000人超の観客を集める大イベントに。その後、オール糸島ロケの映画制作にまで発展しています。

PTAや地域の各種委員など、暮らしに根ざした役割も引き受けている福島さん。「好き放題やらせてもらっている」と笑いますが、それは糸島という土地が持つ懐の深さがあってこそのことでした。

糸島の特色|「出る杭」を打たない、歴史が育んだ寛容さ

福島さんが語る糸島の最大の魅力は、「人」です。

「本当に多種多様な面白い方々がめちゃめちゃ住んでるんですよね。で、一方で、それを受け入れてくれる地元の地域の方々がいて」

移住者が新しいことを始めても、周囲は寛容に受け入れ、むしろ助けてくれる。他の地域では「出る杭は打たれる」という話をよく耳にするけれど、糸島ではみられない。福島さん自身、好きなことを片っ端からやらせてもらってきた実感があります。

その寛容さの背景には、歴史があるのではないか──福島さんはそう考察します。

「海を隔てた先には壱岐があって、対馬があって、朝鮮半島、中国大陸がある。歴史的にも、外からの人を受け入れるような、日本の一番最初に到達する地だったりしたんじゃないかなと」

古来より大陸からの文化や人が最初にたどり着いた場所。その歴史が、異なるものを受け入れる気質を育んだのかもしれません。

もうひとつ、福島さんが印象的だと語るのは、同業者同士の関係性です。

「同じジャンルなのに、お互いの宣伝とか、フライヤーをお店に置いてたりとか」

競合ではなく共助。ライバルではなく仲間。この空気が、糸島を「温かくて、自己実現がとてもしやすい地域」にしています。

福島良治さんの日常|海ではなく、田んぼに息を呑む

福島 良治(ふくしま・りょうじ)さん(いとしまコンシェル合同会社 代表社員)取材時の様子

おすすめの風景を訊くと、意外な答えが返ってきました。

「メディアだと海がすごく注目されてるんですけれども、僕がこっちに来て本当に美しいなと思ったのは、田畑。主に田んぼで」

春の麦、夏の稲。二毛作が織りなす糸島の田園風景は、季節ごとにまったく異なる表情を見せます。水田に水が張られると、日中は鏡のように周囲の自然を映し出し、夕方になれば夕焼けを照り返す。そして麦の季節──。

「黄金色にふわーっと麦畑がなって」

まるで映画のワンシーンのような光景が、福岡都心から40分の場所に広がっている。観光メディアが映さない、生活者だけが知る糸島の美しさがそこにあります。

おすすめスポットについては、筑前前原駅周辺を挙げました。

「古くは宿場町として栄えたところに、いろんな方々がいま自己実現をし出していて。多種多様でユニークなお店があるんですよね」

かつての前原宿が、いま「自己実現のフィールド」として再生している。糸島を訪れたら、海だけでなく、この中心市街地でいろんな人と出会い、いろんなものに触れてほしい──福島さんはそう語ります。

こんなところがGOOTです|旅が「平和」への一歩になる

GOOT Japanが掲げる「つながり・共創・フェアツーリズム」の理念について、福島さんは「全部共感できる」と即答しました。

「やっぱり人が本当にキーワードだなと思っていて。その土地に行って、その土地の人たちと会って、普段自分が生活してたら出会えなかったであろう人や価値観に出会う」

移住してきたからこそ実感する、「人」を介した旅の価値。それは観光名所をめぐるだけでは得られない、一生ものの体験です。

そして福島さんは、その先にある大きな可能性に目を向けます。

「それがどんどん広がっていったらいいなと思いますし、ゆくゆくは平和活動にもつながっていくことだろうなっていう」

GOOTが世界へと活動を広げていること。糸島にある九州大学に世界各国から留学生が来ていること。それらが結びつけば、糸島の良さを世界に伝えるだけでなく、各国の良さに触れるきっかけにもなる。ローカルとローカルがつながり、人と人がつながり、やがてそれは国境を越えた理解と平和へと広がっていく──。

「そういう可能性って日本全国いろんなところにもあると思いますし、本当に楽しみにしています」

観光客を「仲間」に変えるフェアツーリズムの思想は、この寛容な土地にこそよく似合います。100人の観光客より、何度も訪れる10人の友人を。糸島は、その理想をすでに体現している場所なのかもしれません。

福島さんと歩く糸島 ── 100人より「10人×10回」訪れたくなるまちの物語

ここからは、3日間のモデルコース「糸島 まち歩き 体験記」として、福島良治さんの案内でまちを歩きます。この体験記は、筑前前原駅を起点に、前原商店街→森の循環体験→海を3日で巡るモデルコースです。

単なる名所巡りではありません。移住者と地元の人々が「好きなこと」を持ち寄って生まれた個性豊かなスポットを巡りながら、海沿いの観光地だけでは出会えない糸島のもうひとつの顔──「自己実現のフィールド」へ踏み込む3日間の旅です。

【1日目】中心市街地(筑前前原・前原商店街)を歩く──旧宿場町に芽吹く「好き」の生態系

オープンコミュニティースペース みんなの|まちに開かれた「居間」になる多目的スペース

筑前前原駅から歩いて7分。通りの角に、見上げるほど高い鉄塔を背負った白い建物が現れます。「OPEN COMMUNITY SPACE みんなの」としてまちに開かれたこの場所は、福島さんが運営する施設のひとつです。

ガラスのドアを開けると、まず目に飛び込んでくるのは、木の壁一面に貼られたフライヤーとチラシの群れ。「アートスクール ひみつきち」「科学教室」「寺子屋しましま」「Sailing Boat 会員募集」──子ども向けのワークショップから地域のサークル活動まで、糸島で「何かやりたい人」の情報が、ここに集まっています。

木のカウンターの上には、糸島の観光マップやパンフレットが並び、旅人にとっても糸島の入口になる空間です。コピー機やFREE Wi-Fiも完備。まち歩きの起点として、まずここに立ち寄るのもおすすめです。

「みんなのほんだな」と、一杯200円のコーヒー
オープンコミュニティースペース みんなの 本棚

奥へ進むと、壁一面の本棚が迎えてくれます。「みんなのほんだな」と名づけられたこの棚には、絵本から写真集、地域の本、『星の王子さま』まで、誰かが持ち寄ったであろう一冊一冊が丁寧に並んでいます。壁には地元の新聞記事も貼られていて、糸島の「今」を感じられる場所です。

オープンコミュニティースペース みんなの コーヒー

入口付近には、コーヒーのコーナー。地元ロースターのドリップバッグが一杯200円から。バッグを選んでお湯を注ぎ、本棚から一冊を手に取って腰かける。それだけで、旅先の時間がゆっくりと流れ始めます。

木組みのロフトと、コンクリートのコワーキング

建物の奥には、大きな木のフレームがそびえています。1階はコンクリートの土間にデスクと椅子が並ぶコワーキングスペース。木の階段を靴を脱いで上がると、ロフトにはネイビーのソファが置かれ、窓越しにまち並みが見えます。

上から見下ろすと、この空間の全体像が見えてきます。木の本棚、コワーキングのデスク、受付カウンター、自転車、そして多目的スペース──ひとつの建物の中に、働く場所、学ぶ場所、くつろぐ場所、遊ぶ場所が自然に同居しています。

オープンコミュニティースペース ロフトから
木組みロフト×コワーキング。暮らしと仕事が同居する空間
みんなのあそびば(レンタサイクル・多目的スペース)

カーテンで仕切ることができる奥のスペースには、「みんなのあそびば」と書かれた案内板。フローリングの広い部屋には低いテーブルが置かれ、壁沿いにはずらりとレンタサイクルが並んでいます。「みんなの」という名前のとおり、用途を限定しない自由さが、この場所の本質です。

福島さんはインタビューで、自らの一日を「毎日違うので、パターンがない」と語りました。まさにこの「みんなの」がそうであるように、決まった型にはまらないこと自体が、糸島の暮らしの姿なのかもしれません。

ここで糸島の情報を仕入れ、レンタサイクルを借り、コーヒーを片手にまち歩きの作戦を立てる。あるいは、帰ってきてソファに沈み込み、一日の出来事を振り返る。「みんなの」は、糸島のまち歩きの起点であり、終点でもある場所です。

オープンコミュニティースペース レンタサイクル

オープンコミュニティースペース みんなの 施設情報

施設情報
  • 所在地:福岡県糸島市前原中央3丁目4-3
  • アクセス:JR筑前前原駅から徒歩約7分
  • 休館日:公式サイトにて確認
  • 利用料金:ドロップイン3時間500円、1日1,000円 ※学割あり
  • 特徴:コミュニティスペース、コワーキング、レンタサイクル、観光案内、みんなのほんだな、みんなのあそびば、イベントスペース
  • 備考:FREE Wi-Fi完備、スマホ充電レンタルあり
  • 公式サイトhttps://minnano-itoshima.com

※最新情報は公式サイトをご確認ください

森とふれあうワークショップ 森への道

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