【多治見市】たじみDMOと1泊2日まち歩き|タイルと美濃焼の“陶都”で工房・窯・まちを巡る旅

水月窯

※本記事は2025年11月の取材をもとに構成しています。紅葉の風景など、季節の描写は当時のものです

この記事でわかること
  • たじみDMO COO・小口英二さんが多治見で「官民の間」に立つ理由
  • 多治見が“陶都”と呼ばれる背景(美濃焼・タイル産地としての厚み)
  • 1泊2日のまち歩きモデルコース(駅周辺/笠原/永保寺/水月窯/本町オリベストリート)
  • 工場見学・陶芸体験・タイル体験のポイント(予約・所要時間の目安)

 名古屋から中央本線快速でおよそ30分。「陶都」と呼ばれる多治見市に到着です。

 やきものの歴史は、実に1400年。作家やクリエイターが当たり前のように暮らす街で、新しい挑戦が静かに、しかし確実に動き始めています。

 今回お話を伺ったのは、たじみDMOでCOO(最高執行責任者)を務める小口英二さん。17年前、金沢からこの地に移り住み、空き店舗のリノベーションや新規事業の創出を重ねながら、まちの風景を少しずつ変えてきました。「ものづくりを真剣にやっている街」を世界に発信したい——その言葉の奥には、地域への深い愛着と、フェアツーリズムへの共感がありました。

目次

「金沢TMO」から多治見へ ── 小口英二さんが選んだ道

たじみDMO COO 小口英二さん 取材の様子
たじみDMO COO 小口英二さん(キーパーソン)
今回のキーパーソン

小口英二(おぐち・えいじ)さん

たじみDMO COO(最高執行責任者)

プロフィール:金沢の繁華街から、多治見のまちづくりへ

小口さんの原点は、大学時代を過ごした金沢にあります。

長野県出身の小口さんは、進学を機に石川県金沢市へ。繁華街でアルバイトに励み、やがてオーナーから店を任されるまでになりました。しかし、客足は伸びません。自らビラ配りに奔走する中で、ある現実に直面します。

「ビラまきをしながら『そもそも街に人がいない』ことを目の当たりにしたんです」

そのとき出会ったのが、金沢でまちづくりに取り組む会社でした。彼らの志に惹かれ、入社を決意。それが、この仕事の始まりでした。

そして17年前、小口さんはこの地へと移ります。

当時、「既存のまちづくり会社がうまく機能していない」という課題を抱えた多治見は、立て直し役を求めていました。マネージャーとして着任した小口さんは、以来、地域の方々とコミュニケーションを重ねながら、精力的にまちづくりに取り組んでいきます。

多治見との関わり:1人から50人へ、官民の「間」に立つ

移住当初は1人だった組織が、現在は約50人規模の「たじみDMO」へと成長しました。2022年4月、多治見まちづくり株式会社と多治見市観光協会、本町オリベストリートのまちづくり会社「華柳」の3社が統合し、新たな体制でスタートを切りました。

現場は頼もしいスタッフに任せつつ、小口さん自身は「新しい事業の種」を探して街を歩く日々を送っています。

「いい物件があれば所有者さんを探して『ここを使いたい』と調整したり、行政の方に事業のプレゼンをしたり。地域の経済界の方々に応援をお願いして回るのも、最近の大きな役割です」

官民の連携組織であるたじみDMOだからこそ、小口さんは常に「間」に立っています。民間の声を聞き、行政に予算をつけてもらう交渉をする。その逆もまた然り。人と人をつなぎ、まちに変化を生み出す——それが、小口さんの仕事です。

たじみDMO 施設情報

施設情報
  • 所在地:岐阜県多治見市本町3-25 ヒラクビル3階
  • 電話:0572-23-2636
  • 公式サイトhttps://tajimi-dmo.jp/

多治見の特色:わが街を自慢したい「作り手」の集団

多治見は、1400年の歴史を持つやきものの街。国内シェア50%超を誇る美濃焼の一大産地として知られています。多くの作家やクリエイターが暮らしており、飲食店で隣り合わせた人が陶芸家だった、なんてことも珍しくありません。

「いろんな地域に行くと『うちの街には何もない』という声を聞くことが多いんですけど、多治見はそういう方が少ない。地域の自慢をしたい方が多いんです」

単に商売をしているだけでなく、街のことを意識しながら商売をしている人が増えている。そこが、今の多治見の面白さだと小口さんは語ります。新しいことを生み出そうという空気が高まり、顔見知り同士でこの地域を良くしていこうという動きが自然と生まれている。その熱量こそが、多治見の最大の魅力なのかもしれません。

小口英二さん(たじみDMO COO)第35回穴窯フェアにて

小口英二さんの1日:器が料理を引き立てる街

小口さんの1日は、街を歩くことから始まります。

「新しい事業を生み出そうと思っていまして、そういう事例をいろいろと見に行ったりですとか、いい物件ないかなって街をブラブラしてたりですとか」

おすすめのスポットを尋ねると、まず挙がったのは多治見駅周辺でした。

「この駅周辺は最近すごく店も増えて楽しくなってきていますし、美味しい店が増えています」
「もともと多治見ってやきものの街なので、たぶん器がいいからということで、料理人の方々も結構がんばって活動されていて。どこのお店に行っても美味しいっていうのが、多治見の最近の特色じゃないかな」

やきものの街ゆえに「器が良いから、料理人も腕が鳴る」という相乗効果。美しい器に盛られた料理は、それだけで特別な体験になります。

小口さん自身のお気に入りは、近所の町中華。ラーメンとチャーハンを頼むのが定番だそうです。「そういう店がなくなっていくのは寂しい。事業を誰かに継いでもらうことも含めて、いろいろな可能性を模索したい」と語ります。

こんなところがGOOTです:フェアツーリズムの実践

小口さんの活動は、まさにGOOTが掲げる「フェアツーリズム」を体現しています。

価値の適正化(フェア)

「やきものを作るための土がだんだん少なくなってきているとか、燃料のことだったりですとか、皆さんいろいろとご苦労されてものづくりを頑張っておられる。そういう価値みたいなものをしっかりとお伝えしていきたい」

原材料である土の減少、燃料費の高騰、作り手の苦労——それらを理解した上で、その真の価値を世界に伝えようとする姿勢。それは、安さだけを求める観光とは対極にある考え方です。

つながりと共創

単なる観光客誘致ではなく、クリエイターと旅人が混ざり合うことで、街のあり方そのものを発信しようとしている多治見。顔見知り同士が「この地域を良くしていこう」と動く姿は、まさに「100人の観光客より、何度も訪れる10人の仲間」というGOOTの理念と重なります。

持続可能な地域づくり

「フェアツーリズム、公正観光というワードにすごく惹かれるところがあります」
「多治見が『ものづくりを真剣にやっている街だ』という、この街のあり方をどんどん世界に発信していければと思っています。皆さんと一緒に取り組んでいきたいなと」

思い入れのある店がなくなっていくのは寂しい——その感情を起点に、事業承継やリノベーションを通じて、100年先も「ものづくりを真剣にやっている街」であり続けるための土台を作っている小口さん。まちの記憶を継承しながら、新しい価値を生み出していく。その営みこそが、持続可能な地域づくりの本質なのかもしれません。

【1泊2日】多治見 まち歩きモデルコース(たじみDMOと巡る陶都)

【1日目】タイルの鼓動と幻想の夜(多治見駅→ヒラクビル→笠原→永保寺→宿)

岐阜県多治見市。かつて「日本一暑い街」として名を馳せたこの場所は、いま、土と炎が織りなす「タイルの街」として、静かに、しかし力強く新しい扉を開こうとしています。地域の人々と旅人が「仲間」として出会い、100人より10人、1回より10回の深い繋がりを目指す「GOOT」の視点で、この街の体温に触れる2日間を歩きます。

旅の始まり:JR多治見駅 

多治見 まち歩き たじみDMOと巡る陶都の旅(多治見駅)
名古屋から約30分、“陶都”多治見へ。タイルと美濃焼の2日間が始まる

中央本線に揺られて到着した多治見駅。ここから、土と炎が息づくまちの物語が始まります。

ヒラクビル|空きビル再生から生まれた交流拠点(本屋・喫茶・シェアオフィス)

2019年にオープンした複合施設「ヒラクビル」は、たじみDMOの象徴的な拠点です。もともと空きビルだったところを一棟まるごと借りてリノベーションしました。

「もともとここは宝石、時計、眼鏡を扱う宝飾店みたいなところだったんです」と小口さんは語ります。商談で使われていた重厚な家具、赤い絨毯は当時のまま。入口の世界時計や建物の真ん中にそびえる階段も、かつての店の風格を今に伝えています。

まちに開かれた場所づくり
ヒラクビル館内のタイル装飾

リノベーションのプロセスは、まさに「ひらく」という名にふさわしいものでした。店内を彩るタイルは、市民ワークショップを開き貼っていただいたものも。いろいろな人に関わってもらいながら作り上げた空間です。

メガネレンズのシャンデリア
ヒラクビル館内のメガネレンズのシャンデリア
メガネレンズのシャンデリア。店の記憶が“光”として揺れる

吹き抜けの中央に目を向けると、シャンデリアのように吊り下げられたオブジェが光を受けて輝いています。かつてこの店に眠っていたメガネのレンズを、金具で穴を開けて一つひとつ繋いでいったもの。店の記憶を宿す光の粒が、静かに揺れています。

ひらく本屋 東文堂本店

1階と2階に広がる書店は、創業から120年以上の歴史を持つ東文堂による新形態の本屋です。全国の書店の多くが取次から送られてくる本をひたすら並べる中、ここでは「自分たちで選んで、ちゃんと本を並べる」ことにこだわっています。知らなかった世界や文化と出会える——そんな本との偶然の出会いを大切にしています。

喫茶わに

1階の飲食スペースはたじみDMO直営の「喫茶わに」。書店に隣接し、本を片手にスープやお茶を楽しめる、まちの居間のような場所です。旬の食材を取り入れたスーププレートが人気で、自家製のドリンクやケーキもおすすめ。地元の作家さんによる美濃焼に盛り付けられた料理は、それだけで特別な一皿になります。

レンタルルーム
ヒラクビル館内 レンタルルーム

2階にはオール電化のキッチンを備えたレンタルルームがあり、1時間1,000円で利用可能。料理教室や勉強会など、さまざまな用途で使われています。キッチン周りには地元らしくタイルがあしらわれ、電力会社と連携して作られたという逸話も。

ヒラクビル 施設情報
ヒラクビル外観
ヒラクビル:空きビル再生で生まれた、まちに開かれた交流拠点
施設情報
  • 所在地:岐阜県多治見市本町3-25
  • アクセス:JR多治見駅から徒歩約8分
  • 営業時間:10:00〜21:00(日曜は〜19:00)
  • 定休日:水曜日
  • 施設構成:ひらく本屋 東文堂本店、喫茶わに、シェアオフィス、レンタルルーム
  • 公式サイトhttps://hiraku-bldg.com/

※最新情報は公式サイトをご確認ください

水月窯

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